こんにちは、赤松ひろかずです。現在国会では予算についての議論が行われています。「子ども予算倍増」も議論のひとつです。
一般の方は「自治体の予算」とは縁遠いと思いますが、我々(シンクタンクやコンサルタントなど、行政からお仕事をもらう職種)にとって「予算」は大事です。簡単に言えば、予算がないと仕事がなくなるからです。
予算の確保は大変です。自治体の収入が急に増えることはありません。むしろ高齢化の影響もあり、支出は増える傾向にあります。また仮に自治体のトップ(例えば市長)が変わり、「独自色を出すためにA事業をやる(例えば「自転車レースを市で開催したい」)」と言えば、A事業を行うための予算を確保しなければなりません。A事業の予算が確保できたということは他の事業に回す予定だった予算が削られる(あるいは事業がなくなる)ということです。
これまでの業務委託のやり方
A事業をやることが決まったとします。自治体の担当者はA事業を行うにあたり、どのようなことを行うのか等を定めた「仕様書」を作成しないといけません。
でもA事業を行った経験がないとどのように事業を行うべきか・どのような仕様書にすべきかがわかりません。多くの場合、他自治体の事例などを参考に仕様書・予算を作成します。
そして実際にA事業を行う事業者を決めます(事業者の決め方はいろいろあります)。
多くの場合、A事業に似た事業を行った経験がある事業者(B事業者とします)がこの事業を受託します。
B事業者は自治体が作成した仕様書のとおりに事業を行わないといけません。仮に仕様書に無駄なことが書いてあったとしてもです。
そして仕様書のとおりに作業を行った結果、思った成果が出ないことがあります。でもB事業者に対しては契約時に決まった「業務委託費」を払う必要があります。
はっきり言って無駄ですね。
成果連動型民間委託契約方式
上記のような無駄をなくすために、「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)」という契約方式を採用するケースが増えています。
前述のとおり、従来は「業務委託契約において委託される業務の仕様が決まっており(自治体が仕様書を作成する)、業務を受託した民間事業者は当該仕様に則り業務を実施すれば、成果にかかわらずあらかじめ定めた委託料が支払われる」こととなります。
一方PFS事業は、
・自治体が民間事業者に業務委託する際に、その委託料等が、事業の成果指標の改善状況に連動して支払われる
・事業の実施手法について、民間事業者に一定の裁量を持たせる
という契約を行うこととなります。
簡単に言うと、
・自治体は事業の目標を伝えるだけです。
・自治体は事業者に対して成果に見合った報酬しか支払いません。
・事業のやり方(仕様書)は民間事業者で考えてね(作ってね)。
という契約方式です。
この契約方式を採用するメリットは、
・より高い成果の導入が期待できる(受託事業者が頑張るからです)
・行政コストの削減が期待できる(無駄となる税金が減ります)
・社会的課題を解決する手法を把握・検証できる(適切な手法が増えます)
・自治体職員の発想が成果志向となることが期待できる(前例主義ではなく成果主義となるため、前向きな発想をするようになります)
・本当に必要な事業に予算を配分することができる(住みやすいまちとなります)
が挙げられます。
とはいえ課題もある
良いことばかりのようですが、PFSの活用事例は全国で100件程度しかありません。残念ながらさいたま市ではまだ活用事例がありません。
2022年3月に科学技術振興機構・社会技術研究開発センター主催で行われた「フォローアップセミナーPFS/SIB(成果連動型民間委託契約方式)」では、自治体がPFS導入を検討する際に大きく分けて3つの課題があると指摘しています。
課題1:債務負担に対して抵抗感が強いこと。
課題2:成果が出るかどうかわからない、払うかどうかわからないものに対して補助金がつけられないこと。
課題3:成果の評価が難しいこと。
しかしPFSを普及させるために内閣府は様々な支援を用意しており、事例が増えれば、その経験が自治体間でも共有されるようになり、PFSが進むと考えられます。
もう一つ大事なのは住民が興味関心を持つことだと思います。住民が興味関心を持ち、何故PFSを活用しないのか? と自治体のトップに対して声を届けることが大事だと思います。
私も声に出していきたいと思っています。
まちづくり経験値99000の男、赤松ひろかずにご期待下さい!